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2006/03/03

未完小説 その1(続く)

ブログのお友達が小説やエッセイを書いているのに刺激を受けて、自分の書いた小説も載せようかと思います。
これは10年以上前にワープロを買った記念に書きかけたものですが、自分の遅筆さと文章表現力の無さに嫌気が差して中断した小説です。
その当時のワープロ(富士通OASYS)は既に手放してしまい、3.5インチ2DDのフロッピーだけが残っていてもう中身を見る事が出来ないと半ば諦めていたのですが、一太郎を使えば今のPCでも読める事を知り復活しました。
でも未完だし、途中書いてないし、後半無いし、今後続きを書く予定は無いしというヒドイ物です(^^;)
それでも良ければお読み下さい。ジャンルはSFっぽいライトノベルっぽいものです。

尚、人が死んだり行方不明になったりしますので、そういう事に敏感な方は読むのをお控え下さい。

 

    1.未来

 彼女は東京生まれの東京育ちだと言っていた。最近になって、TOKYOと名前を変えたその街で育ったのだと。彼はその街へ行ったことが無い。一度は行ってみたいと思っていた。彼女と一緒にTOKYOへ。

 昔、大きな戦争があった。
 戦争は数日で終わったが、被害は今までの戦争とはくらべものにならなかった。それまでも人類は公害だの環境汚染だのと地球を汚し続けたが、更に大地は汚れた。自然の力を借りて人々が努力しても、環境を元に戻すのに何十年、何百年とかかった。人口も激減した。人類は滅びるのかと思われた。
 だが、自然はまだ人間を見放してはいなかったらしい。自然は完全とは言わないまでも回復した。科学は更に進歩の道を歩み、人類は再び繁栄の時代を迎える。戦争は二度と起きないと、起こしてはならないと誰もが思った。
 そんな時代に彼は生まれた。
 ロック・ハーシェル。本名は更に長いのだが、普段はこれで通っていたので、これで通すことにする。ロックという名は戦争前の時代の冒険者の名前だったらしい。彼の父親は何を願ってそう名付けたのであろうか。
 彼は先祖代々、科学者となる者が多い家系に生まれた。近所の人々から学者一家と呼ばれ、彼は当然のように大学を卒業し、大学院、そして博士課程をを修了して科学者となった。自分が科学者であるのを当然の事と思っていた。その事に何の疑問も持ったことは無かった。

 ロックは窓の外を長い間見ていた。一見ボーッとして、何も考えていないように見えるが、その眼は探していた。彼女を。
 いつもの喫茶店。「かんてら」という名が懐かしい気がする地味な店。高層ビルの立ち並ぶ通りの中で、この店はビルの一階にひっそりと佇んでいた。彼は窓際の席の一つに座って外を見ていたが、ふと我に返って辺りを見回した。客が自分一人ではない事に気が付く。目の前の席では、仕事の息抜きであろうか、男性が二人、コーヒーを飲みながら熱心に話をしている。横では、老夫婦がBGMを聞きながら暖かな微笑みを交わしている。
 この店の落ち着いた雰囲気が好きなのだと彼女は言っていた。それに紅茶がおいしいからとも。だから、待ち合わせはいつもこの喫茶店。
(今日は珍しく遅いなあ)
 ロックは思わずため息をつく。約束の時間は、かなり過ぎてしまった。普段の彼女ならこんなに遅れることはないのに、どうしたのだろう。何かあったのだろうかと、少し心配になる。
 コーヒーを何杯飲んだかなんて、もう忘れてしまった。
「そんなに飲んだら胃を悪くするわよ」
と、彼女の声が聞こえるような気がする。
 窓の外を、ロックは再び眺めつづける。向かい側もビルが立ち並び、ここに陽が射す時間は一時間も無い。道路はかなり広く、目の前に横断歩道が見える。信号はいつもと変わらぬリズムで色を変える。車の流れが動いたり止まったりしているのが見える。歩道を忙しなく歩く人々、横断歩道を渡る人々。
 彼女は横断歩道から来るのだ。
 暫く、待った。
 客の顔触れがまた代わった。
 それでも待った……。
 誰かが向こうの歩道を走ってくるのが見えた。肩まで掛かる髪と、白いスカートが風に揺れている。
 彼女だ。
 信号が変わるのももどかしく駆けてくる。
 店の入口が開いた。
「ごめんなさいっ」
 息を切らせながら言い切ると、彼女はロックの前に座った。白くて柔らかい生地のフレアスカートが、ふわっと揺れた。明るい栗色の髪と、くるくると表情の変わる眼が微笑んでいる。
「本当にごめんなさいっ」
 ぺこっと頭を下げて、もう一度言う。
 ロックは、そんな彼女が時々天使に見える。心配してたことも一瞬のうちに忘れ去ってしまった。
「るりか、どうしたんだい」
 彼は優しい眼をるりかに向けて言った。
「あのね、私、今日、この間言ってたウエディングドレスの仮縫いに行ってたんだけど、途中でね、小さい時にお友達だった子に逢ったの。それで……」
 あ、私はミルクティーと、ウェイトレスに言って、
「それで?」
 ロックの問い掛けにるりかは話した。
「あんまり懐かしいから、ついつい話し込んじゃって気が付いたらこーんな時間じゃない。びっくりして一生懸命走ってきたのよ、これでも。あー、疲れた」
 私はこんなに疲れたのよというるりかの態度にロックは笑いを堪える事が出来ない。
「お疲れさま」
 一言こう言った後、彼は笑いだした。くっくっくっく、くっくっくっく……。忍び笑いをするものだから、変な声になってしまう。
「もーお、笑わないでよ。本当にしんどかったんだからね」
「うん、わかったよ」
 るりかの言葉があんまり可愛いので、そう言いながらもロックは笑ってしまう。
「ひっどーい」
 るりかはロックの笑いを無視して続きを話しだした。
「その子ね、この間までTOKYOに住んでたんだけど、最近こっちの方に引っ越してきたんですって。TOKYOって言ったら私の生まれ故郷なんだけど。あ、私が生まれた頃は東京だったのよ、日本語でね。アルファベット使ったのじゃなくて漢字だったの、その頃は。東京がTOKYOに変わったのなんて最近だものね」
 彼女が日本と呼ばれていた国の東京という都市で生まれたのだということを、ロックは思い出した。
「その奈っちゃんがね、その子、奈っちゃんって言うの。奈美って名前なんだけど、変なことを言ってたの。どうして越してきたのかって聞いたらね、TOKYOが随分変わちゃったからって。何が変わったのか聞いたら、あの街は住みにくくなった、平和だったのに少しずつ違ってきてるって。おかしいわよ。私が住んでたころは本当に平和そのものだったの。ちょっと心配よね」
「心配って何が」
 ロックは彼女の心配の意味が判っていたが思わず聞き返してしまった。
「ほら、最近噂になってるでしょう。もうじき戦争になるんじゃないかって」
 るりかは窓の外に人の歩くのを頬杖をつきながら見る。
「でも私には良く判らないの。この前の戦争で兵器を造ることは禁止されたでしょう。今戦争をしたって何かメリットが有るとは思えないし、どうしてそんな噂が出るのかしら」 ロックは彼女の問いに、「うん」と一言応え、考えてからやんちゃ坊主みたいな顔をして、
「るりか・野音・フェーズ」
 改まった口調で彼女の名前を呼んだ。
「はい」
 るりかは不思議そうに彼を見た。
「僕の婚約者たる君は、僕の職業を知っているね」
 彼女は頷いた。
「そう、僕の職業は科学者だ。だから身近に感じるのかも知れないけど、最近、科学の進歩が目覚ましいのは知ってるだろう。素晴らしい発明が次々に現れているんだ。その要因の大部分が、政府が研究を奨励していることにあると思う。その奨励の仕方が普通じゃなくて、研究によっては政府が研究費を援助どころか全額負担することも有るらしい。どうしてだと思う」
 ロックの態度が真面目になってきた。
 るりかには、その言葉が彼自身に問いかけるように思えたが、どうしてかしらと口には出さなかった。
「昔から一つのルールが存在しててね。法則と言ったほうがいいだろうか。科学の発展と戦争には決まりがあるんだよ。つまり科学の発展は戦争を招くし、戦争によって科学は発展するんだ。難しい問題だけどね。こんな事を言う人もいる。人間がここまで進化したのは争いがあったからだって、戦い無しでは人は発展しないって。今の世界が本当に発展と呼べるものかは判らないけどね。発展と言うには、人は生態系を破壊しすぎているからね」
 その時、お待たせしましたと、るりかのミルクティーが来た。短い沈黙。
「僕の研究は、政府の援助の対象に入らないんだ。だからね、僕はどんな研究が援助されてるのか調べたんだよ。それで判ったのが――多いのはエネルギー関係だとか、薬品を扱うのだとか、将来兵器として利用できそうなのばかりなんだ」
「で、僕が思ったのはもうじき戦争になるかもしれないってね。君の友達がそう言うんだったら、きっとTOKYOでも空気が変わってきているんだろう。ここらでも普通の人には判らないだろうけど、少しずつ変化がある。それが何の為なのか気が付いたときはもう遅いんだろうけど」
 るりかのカップを持つ手が止まった。瞳に不安の色を浮かべてロックをじっと見る。
 彼は彼女の心配そうな顔に向けて微笑した。
「大丈夫だよ。そんなに心配しないで。僕がいつも言ってるだろう。世の中なんて何とかなるように出来てるんだから。それに――」
 ロックは照れたように、
「君には僕がついてる。僕が、君を、守る。だから心配しないで」
 そう言って笑った。
 るりかにはロックの優しさがよく判っていたから、彼が心配するなと言った時は本当に心配しなくていいと知っていたから、まだ心配な表情ではあったのだけれど「はい」と言って微笑った。
 前の戦争が終わってからかなりの年月が立っている今、人々はまた戦争が始まるかもと心の隅に思っていたのかもしれない。思いながらも、戦争は二度と起こしてはいけないと知っていても、戦争がもうすぐ起きるだろうと判っていたのかもしれない。昔の最終戦争と呼ばれた戦争を経験した人も今は生きてはいないから、科学はこんなに発達して世の中はあまりに平和だから、平和が長く続きすぎたから、また戦争になるのかもしれない。
「ごめんなさい」
 今日何度目かのごめんなさいを彼女は言った。
「私、たぶん怖いのよ。だって今があんまり幸福すぎるから、これ以上の幸福なんて来ないような気がして、不安なのよ。戦争が、すぐ傍で真っ暗な口を開けて待っているような気がするの」
 ロックは言葉少なに照れたまま、
「そんなの心配しすぎだよ」
と呟き、本当はもっと言ってあげたい事があったのだけど何も言えずにいた。彼はこう言いたかったのだ。心配しないで、僕がついてる。それに僕は君を、もっと、今よりもずっと幸福にしたいと思ってる。だから、心配しないで、大丈夫。そう言いたいのに言えないまま、彼は照れていた。ロックは聞いているだけで赤面しそうな気障な言葉を使うのが苦手なのだった。
「うん、そうね。心配しすぎかもね」
 自分に言い聞かせるようにるりかは呟いた。
「ところでどうだった?」
 今日のウエディングドレスの仮縫いについて、ロックは聞いた。
「それがね、今日はドレスの形がだいたい出来上がっててね。サイズを合わせるために着てみたんだけど、それがとっても素敵なの。私が着てるんじゃ無いみたいで、全く別の人みたい。デザインもね、思ったよりもずっとかわいく仕上がってるの」
 彼は安堵した。
 良かった。心配した彼女の顔なんて見たくない。
 嬉しいって書いてある、るりかの顔を見ているだけでロックは幸福な気持ちになる。ずっと彼女のそんな顔を見ていられたらいいと思う。
「結婚式の本番を楽しみにしててね。本当に素敵なのよ」
 ロックとるりかはもうすぐ結婚する。今は婚約者として互いに認められた仲である。
 ロックには、るりかと出会ったのが昨日の事のように思い出される。初めて逢ってからもう二年以上経つというのに。
「るりか。初めて僕らが逢ったのって覚えてる?」
「もちろん、覚えてるわ。だって、あなたって普通じゃ無かったんだもの。今だって言えるわ。あなたが最初になんて言ったのか」
「え、なんて言った?」
「覚えてない?あのね、こう言ったの――そんな所で何してるの?」
「そんな事言ったっけ」
「そうよ。その頃私、まだ大学生で、同じ学校に付き合ってる人が居たわ。でも、その人と別れたくて、別れましょうって何度も言ってるのに別れてくれなくて。私、困り果ててその人と会わないように避けてたの。同じ大学だから会う機会も多くて、その時も隠れてたのよね」
「で、僕が隠れてた君に声を掛けたんだ。あの時、君は僕の研究室からちょうど見える建物の角に長い間居たからね。あんまり長い時間だから、通り道のついでに声を掛けたんだ。そうしたら、君は……。走って逃げて行ってしまって」
「びっくりしたのよ。誰かが声を掛けるなんて思いもしなかったから……」
「僕はあの時、本当に呆気にとられてしまったよ。誰も驚かそうと思った訳じゃない。少し心配でもあったから、声を掛けたのに」
「悪かったと思ってるわ。あの後考えてみたら、あなたが大学の研究室にいる人だって思い出したの。後で謝りに行ったでしょ」
「覚えてるよ。謝りついでだからって、とんでもない事言ったじゃないか」
「あなたしか頼れそうな人がいなかったから……」
「でも普通は言わないよな。今の彼と別れたいから、付き合ってるふりをしてとは」
「言わないわよね。でも、あなただったから言えたのよ」
 傍から見たら痴話喧嘩にしか見えないことも二人は気付かない。あの頃の事を思い出してみれば、嫌な事もあったに違いないのに、今ではもう楽しかった出来事として思い出される。
 ――ピピピピピピピ……。
 るりかの腕時計が鳴いた。
「あっ」
 急に現実に引き戻されてしまった。
「ロック、ごめんなさい。今日はもう帰らなくちゃならないの。家にお客様がいらっしゃるの。ね、明日も会える?」
「明日?ちょっと待って」
 ポケットから手帳を出すと、ぱらぱらとめくって、
「明日は大丈夫だよ。研究も一段落着いたし、これからは暇が出来るよ」
「良かった……。あ、ねえ、ロックの研究ってあれでしょ。えーっと、『相対性理論を踏まえた?宇宙速度に於ける時空間的研究』だったかしら?」
「近いけど、ハズレ」
「え、何?」
「僕の奥さんになるんだったら、研究の名前くらい知ってて欲しいな。中身は知らなくったって構わないけど」
「何よ、意地悪。教えてくれたっていいじゃない」
「明日教えてやるよ。それまでに正しく言えたら、そうだな――何か好きな物買ってやるよ」
「明日になってその言葉忘れないでね。絶対思い出すから」
「じゃあ、急ぐんだろ」
「うん」
 るりかは立ち上がった。つられるようにロックも立った。
「送ってくよ」
「いいの、すぐそこなんだから。それよりロックも気を付けて帰ってね、私より遠いんだから」
「判った」
「また明日、いつもの時間にね」
「るりかも気を付けて帰るんだぞ」
 るりかが笑いながら手を振って店を出ていった。
 ロックはその姿を窓越しに見送った。
 店を出て歩きながら、るりかはこちらを振り返りまた微笑った。
 横断歩道の前に来て立ち止まった。
 来たときと同じように、るりかは信号を待っていた。
 信号の色が変わった。
 横断歩道をるりかは渡っていった。
 ロックはるりかの姿をずっと見守っていた。
 ロックは見ていた。
 その時。
 一瞬。

 空から、

 何かが、

 降って、

 来た。

(未完小説 その2に続く)

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コメント

早速拝見してきました。すっごく面白かったです。(^^)
特にふたりの会話の部分とか、ごく自然に流れている感じですよね(笑)。やっぱり文章の書き方の基本が出来ているというか、一気に読めてしまいます。文章の構成とか見ていると、ハミルトンの影響が大きいか? とか思ってしまいました。(^^)
ぜひぜひ続編を!(^^)

■Reinaさん
わーい、れいなさんに誉められちゃった(^^)
どうもありがとうございます。
続きは過去に書いた分がまだあるので載せますね。

10年以上前に書いた文章なので、影響というと高千穂遙と田中芳樹になるのかなあ?

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